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人手不足を科学する

当社 CIENS では月曜日から金曜日まで毎日、久留米市を中心とした福岡県南部と、佐賀市から鳥栖市にかけての佐賀県東部における、業種別時間給や、その数値から予測できる派遣会社の契約単価に関する統計資料を発表しています。

今回は、鳥栖市の食品業界データに、特徴的な数字が表れていましたので、その点について述べてみます。但し、これは佐賀県鳥栖市に限った話ではなく、日本全国の多くの地域で起きていることにも重なります。


【直接雇用の方が時間給が高い鳥栖市の食品業界】

2018年10月 鳥栖市 食品業界 時間給 派遣単価

2018年10月 鳥栖市 食品業界 時間給 派遣単価

通常、食品業界に限らず多くの業界で、企業が直接雇用する求人の時間給と、派遣会社が雇用する求人の時間給では、派遣会社の方が高いという特徴がありました。 しかし、上記データを確認してみますと、ここ4カ月の時間給平均値は常に直接雇用の方が、派遣会社を上回っています。

これは鳥栖市のみに見られる特徴であり、鳥栖市の周辺地域では、変わることなく派遣会社の方が求人募集の時間給は高い状態です。 この鳥栖市の状況が意味していることは何なのでしょう。

【 求職者そのものがいなくなった鳥栖市 】

鳥栖市の有効求人倍率は 1.76倍。佐賀県全体の有効求人倍率が 1.33倍なので、この差は統計的にも誤差の範囲を超えています。 全国の有効求人倍率が 1.64倍なので、鳥栖市周辺の人手不足感が著しく高いことは理解できるのではないでしょうか。

この有効求人倍率を見ると完全な売り手市場です。
そこで、鳥栖市にある企業の採用担当者は、求職者がより時間給のよい会社に応募しているから、自社の応募が少ないのだと簡単に考えるかもしれませんが、実態は更に厳しいことを理解すべきです。

その理由は、ハローワーク鳥栖が発表している「就職件数の推移」に表れています。 一昨年、平成28年9月にハローワーク鳥栖を通じて就職した人数は251名。 平成30年9月については199名と、2割以上も減少しています。

売り手市場なのに、就職できた人数は減っている?

この数字が表しているのは、求職者そのものがいなくなりつつある、鳥栖市の末期的な状況です。 時間給などの就業条件で選ばれていないこと以上に、働き手そのものがいなくなっていることが根本原因としてあります。

【 直接雇用と派遣雇用の背景 】

この鳥栖市に求職者がいないという状況が、食品製造業の直接雇用に関する時間給が、急速に高まっていることと結び付きます。

食品メーカーが製造しているものは、あくまで消費者にとっては、日常の商品です。 だからこそ薄利多売で、数を販売することで利益を生み出すビジネスモデルであり、人件費の高騰を簡単に販売価格に転嫁することが出来ない厳しさがあります。

また派遣会社にとっては、求職者そのものが減ることは、必然的にスタッフの採用が難しくなります。 その環境下でスタッフを採用する為には、手っ取り早い方法として時間給を高くすることです。 しかし、自社で何かを生み出している訳ではない派遣会社にとっては、派遣先の企業との契約を見直し、契約単価を上げてもらう事でしか、求人の時間給を高くすることは出来ません。

その契約単価が、食品メーカーのビジネスにとって、支払い可能な金額の上限に行きついた結果、派遣会社に対する契約単価を上げることが出来なくなり、打つ手のなくなった企業は、残された選択肢の一つとして直接雇用の時間給を高くすることで、採用をすすめたいと考えていると判断できます。

この状況は働く人、求職者にとっては利益が大きいですが、食品製造業や派遣会社にとっては、労働市場が買い手市場になる事が見込めない現段階では、事態が更に厳しい方向に行きつつあることを意味しています。

【 周辺地域への影響 】

また、このことは鳥栖市の企業だけの問題ではありません。 これから鳥栖市の周辺地域で起きる流れを説明してみます。

①. 鳥栖市にある企業は時間給を高くすることで、求職者の応募を増やそうと考え、時間給を上げる。
②. 鳥栖市への通勤範囲である周辺地域の求職者は、働くなら時間給が高い方がよいと考え鳥栖市の企業に応募する。
③. 周辺地域では求職者が減り、困った企業は時間給を上げて人員の確保を図る。
④. 時間給が変わらないのであれば、通勤が近い方を求職者は選択する。
⑤. 鳥栖市の企業は、時給を上げたにも係わらず再度採用に苦戦。
⑥. ①に戻る

このことを証明しているのが、佐賀市周辺の食品業界の時間給の推移です。

2018年10月 佐賀市 食品業界 時間給 派遣単価

2018年10月 佐賀市 食品業界 時間給 派遣単価

平成30年7月の直接雇用の平均時間給は 817円だったものが、10月の平均時間給は 1,023円と、わずか4カ月で200円以上の上昇となっています。 それに比べて派遣会社の募集に関する時間給の伸びが小さいのは、契約可能な派遣単価の上限に到達したと見ることができます。

いままで佐賀市での就業が多かった、神埼・吉野ヶ里周辺・みやき町の求職者の大部分が鳥栖方面で就業した結果、急速に佐賀市周辺の人手不足感が強まり、直接雇用の時間給を高めたと推察されます。

この ①~⑥ の流れが繰り返されることの本当の恐ろしい点は、求職者の人数は有限であることです。その求職者は人口減少と有効求人倍率の高止まりに伴い、今後も更に厳しさを増し続けます。

人手不足は、既存のビジネスモデルを破壊します。実際に鳥栖市のある企業は社員確保ができず、製造ラインの一部を生産計画に反してストップさせざるをえない事例も発生しています。

解決策はないのでしょうか。

【 CIENSの考える解決策 】

外国人雇用や、AI・RPAによる解決ではない方法として、CIENSが提案している解決策は、時間給すなわち金銭以外のベネフィット(利益)で、他の競合求人との差別化を図るというものです。

時間給は、求職者に対し「金」としての判断基準しか提供することができません。競合する企業がどのような時間給を提示してくるのか、自らが主導権を握ることが可能か否かは周りの状況に大きく左右されます。 だからこそ求職者への情報を伝える道筋をどのように構築するのかが、大切な要素となります。

その一つの手法が「情報量で他を圧倒する」ことです。
人は金銭のみで仕事を選ぶ訳ではありません。 仕事に求めることは人それぞれ千差万別であり、要素の一つに金銭があるだけです。 求職者に「この企業で働きたい」と選択してもらうためには、情報量を増やすことで接触頻度を高めることが、有効な採用手段の一つになります。

関東圏の企業と比較すると、福岡県南部・佐賀県東部にある地場企業が発信している情報量は圧倒的に少なく、当社調べで 約4分の1~5分の1程度です。
確かに最近まで、その情報量で採用に問題がなかったのかもしれませんが、残念ながら労働市場は変わってしまいました。 反面、まだ救いがある点としては、周りの多くの企業が未だに情報発信力が弱いことから、情報発信の取り組みが成果に結びつきやすい点です。

競合企業の情報量が少ない今だからこそ、早期に情報量を増やし採用活動を進めることが、先行者利益に繋がります。 求職者という有限の存在を採用する活動はゼロサムです。 他社との共存を図ることは出来ません。 近隣の企業が採用することは、自社の社員採用確率が低下していることを意味しています。

その点を踏まえ、採用に苦戦している企業は、どの様にして情報量を増やし、他社との差別化を図った採用活動を行うのか、ぜひご一考下さい。


※ 疑問・ご相談等がございましたら弊社の無料メール相談を含めてご活用ください。お待ちしております。

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