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派遣社員の退職を減らすために派遣先企業が出来ること

平成29年「派遣労働者実態調査」が厚生労働省から発表になりました。メディアでも「派遣社員の4割が、今後は正社員として働きたいと考えているが、派遣社員から派遣先企業の正社員に採用される確率は低調である。」との論調で語られています。

同時に発表された内容には、「苦情の申し出」「派遣先への要望」「派遣元への要望」などの調査結果もありますので、それらのデータを基に、派遣先企業が取り組むことができる、取り組みについて述べてみたいと考えます。

派遣社員の方たちの入れ替わりが激しいと、頭を抱えている派遣先担当者にこそ読んでいただきたいものです。


【苦情は2割】

派遣先における就業について、苦情を申し出たことがある派遣社員の方は17.6%、約2割弱です。この数字を多いとみるのか、少ないとみるのかは判断の分かれるところかもしれませんが、心の中に収めておくことが出来ないからこそ「苦情」として行動を伴う申し出をするので、表に出てきている数字として、この結果は決して少ない値ではないと判断できます。

主な苦情の内容をみてみると、「人間関係・いじめ・パワハラが28.1%」と最も高く、次いで「業務内容の27.4%」「賃金の17.5%」と続きます。

Download (PDF, 71KB)

※ 厚生労働省 派遣労働者調査より抜粋

【要望は4割】

派遣先への要望がある派遣社員の方の割合は38.1%、約4割弱です。派遣元に対して要望を持っている派遣社員の方の割合は、51.7%と過半数を超えています。これらの数字から推察するに、約二人に一人は何らかの要望を持っていると考えられます。

派遣先への要望の内容をみてみると、「派遣契約期間を長くしてほしいが29.9%」と最も高く、次いで「指揮命令系統を明確にしてほしいの22.9%」「年次有給休暇をとりやくすしてほしいの21.9%」になっています。

Download (PDF, 90KB)

※ 厚生労働省 派遣労働者調査より抜粋

【いじめ・パワハラのリスクを派遣先は理解する】

まず、苦情の「人間関係・いじめ・パワハラ」についての、人間関係の詳細な内容が明確になっていませんので、性格の合う合わないレベルの話は置いておきます。いじめ・パワハラについては、派遣社員の退職に結び付く可能性が高い原因となるので、早急な対応が必要です。

個々の事例で対応方法は変わるために、一概にこうすれば必ずうまくいくと言える方法はありませんが、派遣社員の方が持つ横の繋がりや、SNSを含めた情報発信の安易さを持ってすれば、いじめやパワハラの内容によっては、瞬時に情報は拡散し、メディアに取り上げられる等、企業にとって大きなリスクにもなりかねないことを経営者がまず理解し、総務や人事を含めた派遣社員の受け入れ部署と意識を共有しておき、いじめ・パワハラに関する苦情が出れば、必ず解決を図るという姿勢を示す必要があります。間違っても、なあなあで済ますことがあってはいけません。

また、インターネット上に一旦拡散した情報を消すことは、ほぼ不可能です。パワハラ・いじめを見て見ぬふりをする企業であるとの悪評が立ってしまえば、それ以降の採用に、どれだけ無駄な経費が出ていくか分かりません。(詳しくは、「ジャパンビバレッジの有給問題の影響を考える」としてブログに記しています。)

【業務内容の苦情と指揮命令の要望の根っこは同じ】

派遣契約とは、派遣社員に従事してもらう業務を明確にした上で結ぶ契約です。ただ現実的に、業務内容のすべてを言葉だけで説明することは出来ませんし、派遣先としては派遣社員の面接禁止です。だから、派遣元から聞いていた話と違う、こんな業務を想像していなかったという業務内容についての苦情が発生したり、業務中も仕事の指示をする人がころころ変わり、なんとかしてほしいという要望に繋がります。

この点を改善するために、派遣先は派遣元に対して、業務上厳しい点を包み隠さずに情報を開示した上で人選を依頼することが最も大切です。派遣社員からの苦情になりやすいのは、楽そうな話で聞いていたのに実際に業務をやってみると、想像以上に苦労させられたといった場合がほとんどです。この点に注意して、派遣元が契約を結びたいが為に、派遣社員に都合の良い話をしていないかを管理する必要があります。(派遣社員、契約開始日の業務に就く前に、再度確認を入れておく程度の心配りがあると良いでしょう。)

また、派遣先の受入れ側としても、誰が指示するのか、誰がどのようにサポートするのか、出来る限り細かいところまで意識の統一を図っておくことが大切です。指揮命令を明確にしてほしいという要望は、あまりにこの状態が続くと派遣社員の退職にも繋がり、それまでの期間に積み上げたものが水泡に帰すことにもなりかねませんので注意が必要です。

【賃金と派遣契約・有給休暇への対応】

本来であれば派遣契約の金額から、派遣元がどのような賃金体系で派遣社員を雇用しているかについて、派遣元が口を出す立場ではありませんが、やはり地域や業種の相場からかけ離れた賃金で勤務させているということになれば、派遣先が適正な相場で契約をしていても、派遣社員の不満が派遣先に対して向くこともありますので、それとなく派遣元の募集内容を確認するなどして、情報を収集しておくべきです。逆に、契約自体が相場から大きく乖離していれば、派遣元も真剣に契約を結ぶつもりもなくなりますので、どれだけ派遣元に依頼をしても案内がないと愚痴をこぼすことになるでしょう。

また、契約期間については大きな事情がない限りは最低でも半年、できれば1年間の個別契約を結ぶべきが今の世の中の情勢です。

年次有給休暇の取得については、言うまでもなく、派遣先には何の権限もありません。有給休暇については、派遣社員と派遣元企業との間のことであり、派遣先が取得させないことは単純に法律違反です。そのことは理解した上で、時期的に有給を取得されると業務に支障が出そうな時などは、前もって派遣社員の方にそれとなくお願いしておく気遣いを派遣先は持つべきでしょう。

【まとめ】

長々と述べてきましたが、上記の対策以上に大切なことは、派遣社員だからとプロパー社員と大きく区別をするのではなく、気遣いや心配り・コミュニケーション量を含めてプロパー社員以上に、小まめに意思の疎通を図っておくことが苦情を防ぐ要素であることは、最後に付け加えておきたいと思います。

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