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5.272018
日大アメフト部問題から見るリスクマネジメント
日本大学アメリカンフットボール部が、関西学院大学との試合で起こした問題から浮かび上がってきた、企業や組織のリスクマネジメントについて書いてみたいと思います。
「リスクマネジメント」という言葉は時々耳にすることがあります。日本語にすると危機管理という意味ですが、この「リスク」とは何を意味しているのでしょう。分かりやすく言えば企業や組織が被る「損失の可能性」ということになります。人事に関することで言えば、社員の大量離職、社員の不正など古くからあったものだけでなく、最近ではパワハラ、セクハラ、個人情報の漏洩など、時代の移り変わりに応じて新たに生まれてきたリスクも多々あります。
これら企業や組織の活動において、起きうる可能性がある「損失」を、あらかじめ考え得るすべてを把握し、万が一それらの事態が起きた場合に損失を最小化すること、また未然に防ぐことを計画しておくことが「リスクマネジメント」となります。
また、個人的な意見としては「最善を信じ、最悪を想定し、中庸をいく」という、最善の状態になることを信じつつも、最悪の事態を想定して準備を怠ることなく、どちらにも極端に偏ることなく物事をすすめることも、事態の発生後には大切な要素だと考えます。
では、今回の日大アメフト部の事例では、何が最大の問題だったのでしょうか。
初動の遅れ、問題認識の甘さ、行き当たりばったりの会見、会見の司会者の言動など数々の問題点があることは確かですが、やはり組織に損失を発生させる事態が起きた時に、どのように対応し損失を最小化させるのか全く決められていなかった無計画さが、そもそもの失敗の根本であり、ここまで事態を悪化させた根源的な問題であると断言できます。
日本には、言霊という文化があるためなのか、不吉なことを最初から考えること自体を避ける傾向があると感じます。これは、最善のみを盲目的に信じ、最悪の事態には目を瞑って見ないようにしているだけでなく、思考もストップさせていることに他なりません。その為に、実際に事態が起きてしまうと場当たり的な対応に終始し、事態を収拾させることが出来なくなってしまいます。
ドワイト・D・アイゼンハワー、第二次世界大戦時の連合国遠征軍最高司令官を務め、その後、第34代アメリカ合衆国大統領になった人物です。
その彼が、「戦場においては、予測出来ないことが頻発し、事前の計画通りに戦闘が進むことはなかった。しかし、計画を立てるという行為そのものは非常に重要であった。」と語っている、この言葉がリスクマネジメントの本質を物語っていると考えます。
どれだけ、リスク対策を計画立てマネジメントしているつもりであったとしても、想定できていなかったことが起きるのが現実世界です。だからこそ、可能な限り起きうる可能性がある事態を想像し、最悪を想定したリスク対策を計画することが、万が一の事態から組織や企業を守る上では大切なことになります。
そういった意味で、今回の日大の事件は、ニュースに取り上げられ世間の関心ごとになることなど想像せず、知らず存ぜぬで押し通すことが可能と考えた関係者の考えの甘さと、危機管理の計画のなさが表れた事例であるとも言えるのではないでしょうか。
ただ逆に、多くの企業や組織にとっては良い反面教師になった事例でもあると思われます。損失の可能性を軽く考えると、どのようなことが起きるのか、事件の熱が冷めやらぬ今だからこそ、今一度リスクマネジメントに目を向けてみる良い機会かもしれません。